蔵書-懐徳堂関係

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詩経断 六冊

【懐徳堂関係】

詩経断 六冊

本書は、購入した帙に「中井竹山自筆稿本 詩経断」とあり、仮綴表紙にも「中井竹山先生」という題簽が貼り付けてあり、「中井竹山」の『詩経』の注釈書と目されてきた。しかし、

1.他の竹山自筆のものとの対校の結果、字体からは「中井竹山自筆」とは思われない。
2.「履軒云」(中井履軒、竹山の弟)や「景範云」(加藤景範)などの書き込みが見られる。
3.第一冊が「休々亭」の用紙に写されている。「休々亭」は加藤信成(加藤景範の父)のこと。

以上のことから、「中井竹山自筆」ではなく、また内容も「竹山」、「履軒」の注釈を何ものかがまとめたとするのが穏当であると考えられる。また一句めの注釈内容の詳細な検討から、特に履軒の注釈に近いことが判明した。ただし、大阪大学の懐徳堂文庫には、中井竹山の『詩断』(版本に書き込み)が残されており、今後はこの『詩断』との比較検討が必要である。
なお『詩経断』の仮表紙に「加藤友輔」宛ての書簡の袋が使われていることが確認された。「加藤友輔」は「加藤景範」であり、上記の点と合わせて考えると、『詩経断』は加藤景範の手になる蓋然性が最も高いと推断される。

詩経断 六冊