研究科の魅力を語る

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研究科の魅力を語る for 2019

さまざまな立場でユニークな研究をしている院生が、研究科の魅力を語ります。

王 玲玲 │ 河南 智洋 │ 平塚 裕子 │ 富川 数万 │ 森 郁

 


大阪府立大学大学院博士前期課程、人間社会システム科学研究科 人間社会学専攻 言語文化学分野に所属する王玲玲です。中国の大学を卒業し就職しましたが、日本の大学院で学びたいと考え留学を決めました。現在は、博士前期課程の現在1年生です。

現在は、相田洋明教授の下で、アメリカ文学、トニ・モリスンのデビュー作「青い目が欲しい」を研究しています。トニ・モリスンはノーベル賞を受賞した女性黒人作家で、女性ならではの視点から、白人至上主義のアメリカ社会での黒人生活が描かれています。私は彼女のデビュー作に深い感銘を受けて、黒人作者の作品に関心を持ち始めました。今の研究テーマは家庭視点から「青い目が欲しい」におけるセクシュアリティと愛について考察することです。
「なぜ日本でアメリカ文学を研究するのか」とよく聞かれています。確かに、アメリカ文学の研究というと、アメリカの大学で研究すべきだと考える人が多いかもしれません。しかし、文学とは、国や言語を超えて人の心に響く芸術だと考えています。日本と中国とアメリカ三国の研究者の視点を同時に考察できるのは、日本でアメリカ文学を研究する魅力だと思っています。これが、私が日本の大学でアメリカ文学を研究する理由です。

大阪府立大学の大学院で学ぶ魅力の一つは、本専攻のゼミに限らず、他分野のゼミに参加するのも可能であることです。現在1年生ですが、言語学や中国文化など、色んなゼミの授業に参加しました。他分野の知識を学びながら、他分野の先生や院生から論文に関する意見も頂きました。それによって、常に新しい発想が出てき、自分の研究を深めつつあります。
本研究科では、人間社会学専攻の院生は、年二回ポスター発表をすることになっています。学会発表した経験のない私にとっては、とても貴重な経験となりました。発表会で先生や先輩から質問や助言を受け、論文の問題点を見つけ出しました。他分野の院生の発表を聞いて、参考になることもありました。

大阪府立大学は留学生の支援が充実しています。たとえば、私は、研究室における勉強以外にも、国際交流グループが主催した行事や活動に参加し、色んな国の人と出会い、楽しく充実な留学生活を送っています。日本への留学を考えているみなさん。大阪府立大学の人間社会システム科学研究科で、楽しく有意義な研究生活を始めてみませんか。

 


河南 智洋

大阪府立大学大学院博士前期課程、人間社会システム科学研究科 人間社会学専攻 社会福祉学分野の河南です。私は、現在市役所の職員として、高齢者虐待への対応とその防止を中心とした、高齢者福祉に関する部署で働いています。社会人特別選抜で入学し、現在博士前期課程の一年生です。

以前、別の自治体において長期入院患者の退院支援に携わっていました。本学人間社会システム科学研究科を志望したのも、自分の興味・関心に沿った精神医療の在り方を問い直す研究をしたいと考えたからです。大阪府立大学の研究科を志望したのは、大学院でこの研究する上で、どうしても指導を受けたいと思った先生が、本学の研究科におられたからです。家や職場から学校は若干遠いのですが、それでも通える範囲ですし、納得のいく修士論文を書くために必要な環境に身を置けていると感じています。

現在の研究テーマは、精神的に危機的な状況にあるときでも、望まない治療や入院を強要されずにいられるような、精神医療に対するオルタナティブなアプローチの可能性を考えていくことです。かつての職場において退院支援に携わり、実際に精神的に困難な状況を経験してきた方のお話を伺うなかで、強制的な入院や、記憶を失うほどの薬物を投与されるなど、治療という名目で行われていることが、困難な状況にある者に更なる混乱をもたらすことがあるのではないかと考えるようになりました。
他の国に目を向ければ、わが国では強制的な入院が選択肢に上がるような状況であっても、ピアランレスパイトなど、ピアサポートの関係の中でその時期を過ごす取り組みが効果を上げており、こうした取り組みによるこれまでと違った過ごし方の選択肢を持つことは、わが国においても可能なのではないかと考えています。
この研究の面白いところは、当たり前と信じられていることや、正しいとされていることについて、「どうしてそう思うようになったのか」をじっくり考えていくところにあると思います。この分野の根強い思い込みを丁寧に疑っていくのは、やはり面白く、やりがいのある作業だと感じています。

最後になりますが、本研究科を志望される方、特にフルタイムで働く社会人の方は、長期履修について一度検討してみてください。修了までの期間は長くなりますが、私の場合、必修科目を履修するだけでも職場との調整が大変だったので、非常に助かっています。捗れば短縮も可能ですし、何より、この歳で少しでも長く学生で居られるというのも悪くないと思っています。

 


大阪府立大学大学院博士前期課程、人間社会システム科学研究科 人間社会学専攻 人間科学分野に所属する平塚です。大阪府立大学の地域保健学域教育福祉学類から、この研究科に進学しました。大阪府大学教育福祉学類には、高校教員の経験を経て、社会人特別選抜により入学し、内部進学しました。現在博士前期課程の1年生です。

全ての人がその人の望む教育を受けるためには、福祉の視点が必要との思いから、大阪府立大学の教育福祉学類で学びました。私が大学院への進学を考えたのは、同学年の皆が就職活動を盛んに行っていた頃です。卒論に取り組みだした頃は、漠然と、社会福祉士の資格を生かして、MSW(医療ソーシャルワーク)かSSW(スクールソーシャルワーク)を、との考えも持っていました。しかし、卒論が進む中で、もう少し、この内容を深め、展開していく、という進路を選択するのも良いのでは、と考えるようになっていきました。

研究テーマは、「高校家庭科におけるジェンダー教育の課題ー『家庭基礎』に焦点を当てて」というものです。高校家庭科は必修ではありますが、3年間で2単位という学校が多いのが現状です。その少ない授業で子どもたちのジェンダーに対する気づきや意識の変容に関わるには、教員も教科書も変わっていかねばなりません。そこでこの2年間にまず教科書の分析を考えています。
このテーマを選んだのはやはり、自分が、長年家庭科を教えていたからだと思います。自分が生徒であった頃は「家庭科なんて…。」と思っていましたが、高校でこの科目を担当し、家庭科の意義、重要性を感じるようになました。現在では、「自分が自分である生き方ができるように」支える教科であり、生きていく上で、「現状を知り、打破する力を育む」教科だと思っています。高校家庭科の履修を通じて、ジェンダーによる生き辛さの払拭を願っています。

大阪府立大学の研究科は、学生の関心や希望に応じていただけ、それに合わせた指導、助言をいただけるので、研究環境としてとても恵まれていると思います。また、学びが横断的で、自分の研究科以外の分野についても学ぶことができ、視野が広まるため、違う角度から自身の研究にアプローチする道が見えてもきます。あなたも一緒に、ここで学びませんか?

 


富川 数万

大阪府立大学大学院博士前期課程、人間社会システム科学研究科 現代システム科学専攻 知識情報システム学分野の富川です。知識情報システム学類を卒業し、内部進学しました。現在は、博士前期課程の2年生です。
私は、大阪府立大学の現代システム科学域知識情報システム学類に入学しました。受験当時は、あまり深く考えておらず「今流行りの情報技術を学びたい」「でも文系科目も好きだしそっち方面に進む可能性も残したい」という考えから、知識情報システム学類を選んでいました。入学当初からなんとなく大学院まで進もうとは考えていましたが、当時まだ創設されて3年目と歴史の浅い学域・学類ということで、ここにいてどれほど就職に有利であるかが未知数だと感じており、場合によっては他の学部もしくは他の大学の院への進学も視野に入れておりました。

しかし、本学で学んでいくうちに徐々にこの学部で得るべきことが明確に見えてきました。今世間では技術を持っているだけでなくそれを正しく問題解決に繋げ、社会に還元するための考え方を持ち合わせている人材が強く求められており、ここではそのような人材を送り出すための教育がなされていることを実感しました。講義としてはプログラミングなどの基礎的な情報技術を学ぶもの以外にシステム設計や企画に関する授業など社会に出てから経験するであろう仕事に直結するものも数多く存在します。
とはいえ、座学だけでは身につくものは知識だけで、実際にシステム設計や企画などの行動に移す機会はありません。そういったことを身をもって学べる環境が十分でないことを懸念して教員に相談した結果、本学の大学院に進むことで企業との共同研究などを通して実践的な学びの場がもたらされる可能性が広がることを知りました。実際、現在僕は某アパレル会社にて共同研究という形で事業に携わり、大学で学んだ知識を生かして企業のサービス形態をよりよくするために日々勤しんでおります。
また、研究としてはamazonのカスタマーレビューのテキストデータを用いて商品の評価要因を分析しております。この研究を進めることで既存商品の評価が明らかになり、次の新商品開発の方針決定にも影響を及ぼすと考えられます。

最後に、本学の研究科で学びたいと考えている方へのメッセージを記させていただきます。大学院に進む意義は学部時代と比べてより社会に一歩近づいた立場で研究を行えることにあると考えております。もちろんそのためには専門知識が必要となりますが、この研究科の講義ではそういった知識を吸収できる環境が整っていると思います。技術と解決力を兼ね備えたハイブリッドな人材を目指したい方はぜひここで力を蓄えてください!

 


森 郁

大阪府立大学大学院博士前期課程、人間社会システム科学研究科 現代システム科学専攻 環境システム学分野所属の森 郁です。大阪府立大学の現代システム科学域環境システム学類からこの研究科に進学しました。現在1年生です。

本学の研究科を志願した理由ですが、学域生の時には、教職課程や情報学の副専攻を履修していたこともあり、環境科学以外の授業も多く受講していました。元々生物以外の広い分野に興味があり、大学院でも一つに絞らず多くのことを学びたいと考えていました。人間社会システム科学研究科では様々な分野が集っており、複数の分野にまたがった授業を受けることができるためこの研究科を選びました。

現在は、雑草学を専門とする研究室で、雑草ヒエの研究をしています。これまで知られていたものとは異なる野生のヒエ属植物が最近発見されたため、それがどのような特徴でどのような系統進化をしてきたのかを、形態的、生理的、遺伝的な諸形質を調べることで明らかにすることを目的としています。
このテーマを選んだ理由は、元々遺伝に興味をもっていたこともあり、それまで知られていなかった植物という存在が純粋に面白そうだと思ったからです。研究を始めてからはヒエ属の複雑な系統進化や種ごとに環境に適応した形質の差がとても興味深いと思いました。研究室に所属するまでは雑草についてあまり気にすることがありませんでしたが、研究をはじめてからは何気ない特徴の中にある生物の不思議がとても面白く、道を歩いているときも足元や周囲に生えている植物を気にするようになりました。

この研究科の一番の魅力はやはり多分野の学びができることだと思います。自分と異なる研究分野や視点をもつ先生や学生と、授業や日々の生活を通して議論できる環境が整っていることはほかの研究科にはない特徴です。理系、文系の枠を超えて自分の興味のあることを学べたり、研究科の大きなテーマである持続可能性について考えたりできて、この研究科を選んでとても良かったと感じています。人間社会システム科学研究科は、現在の自分の研究テーマを深めたいけれど他にも様々なことを学びたい、と感じている方にぴったりの研究科だと思います。

 

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