研究科の魅力を語る

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VOICE 研究科の魅力 学生の声 for 2017

学生の声 教員からのメッセージ  研究科長からのメッセージ


言語文化学専攻
博士後期課程

研究テーマ:
話し言葉における舌打ち音の機能と用法ー日仏対照言語学的観点から

【指導教員】
高垣由美(テクスト言語学/フランス語学)

 


人間科学専攻
博士前期課程

研究テーマ:
途上国の貧困、子どもの教育を受ける権利

【指導教員】
伊井直比呂(教育学)

 


社会福祉学専攻
博士前期課程

研究テーマ:
滞日外国人の生活支援

【指導教員】
三田優子(精神保健福祉)


副研究科長
人間科学専攻

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田間 : まず、自己紹介からお願いできますか。

小暮 :社会福祉学専攻の小暮和歌子です。研究テーマは「滞日外国人の生活支援」ですが、論文執筆には、まだまだテーマの絞り込みが必要です。今は、もっと先行研究をたくさん読み込まないと・・と言う段階です。どうしても、自分の中でキーワードに偏りが出てしまって、それに縛られて論文や資料の検索に広がりがでないことが今の悩みでもありますね。

森田 :言語文化学専攻の森田美里です。日本人とフランス人とのコミュニケーションにおいて誤解を招く原因になる現象に興味があり、現在はその一つである「舌打ち音」に関する研究をしています。

ラメス :人間科学専攻のパタク・ラメス・プラサッドと申します。ネパール出身です。今途上国の貧困と子どもの教育を受ける権利について研究をしています。

田間 :どの研究テーマも大変面白そうですが、なぜ、そのテーマを選びましたか。研究テーマの魅力は何でしょうか。

小暮 :研究テーマを選んだ理由は、私自身が障害児を育てる中で、マイノリティーとしての生きづらさを強く感じ、声を上げてきました。しかし、何らかの理由で声を上げられないマイノリティーはどんな生きづらさを感じているのだろう。そして自分の生活を通して地域に住む声を上げられない滞日外国人の生活困難に気がつきました。これは、支援が要るのではないかと。研究テーマの魅力は、とにかくわからないことだらけ、だからもっと知りたい、そして自分には、どのように研究を通じて支援が出来るかを考えています。

森田 :私は非常勤で日本語教師をしているんですが、フランス人留学生の話す日本語と母語であるフランス語の談話調査をしていた際、偶然、ある一定のルールをもって舌打ちが表れていることに気がつきました。我々日本人にとって舌打ちは不快な感情の表れですが、それとは異なる機能がフランス語の舌打ちにはあるのではないかと考え、この研究テーマを選びました。この研究の魅力は、これまで単なる悪癖や偶然の雑音としてフランス人にも聞き流され、研究テーマにすらなってこなかったものが研究対象だというところです。つまり、誰もやっていない、まったく明らかにされていないことに挑んでいるというワクワク感が常にあります。

ラメス :私はネパールの大田舎で生まれました。貧困家庭が多く、周囲には学校へ行けない子ども達が沢山いました。こういう背景に生まれた私ですが、ネパールの大学まで行って日本への留学に繋がりました。日本へ来て、教育に対しての考え方や子ども達は100%学校へ行けることなどに驚きました。ですから教育に優れた国で研究して将来ネパール子ども達のために活動できる研究テーマを決めました。自分の分野で研究だけではなく、大阪や奈良の学校交流会に参加し、現場の教育状況、日本の教育や日本人の考え方などの知識を得ています。また一番気になった制度として、日本の義務教育をネパールで導入したいと思っています。

田間 :みなさん、普段は全く別々の専門分野で研究なさっていますが、共通点がありますね。研究テーマは、身近な生活のなかで見つかるということ。子育てでの経験や、育った国の状況、仕事をしていて感じたこと、ですね。そこから、「ワクワク」「分からないことばかりで、もっと知りたい」「自分の国で子どもの教育を受ける権利を広めたい」、といった、強い気持ちが出てきた。それが、みなさんの研究のモチベーションになっているように思います。
今のお返事のなかで、少し言われていましたけど、子育てやお仕事など、みなさんは研究生活以外の生活をお持ちのようです。どのように両立しながら、研究時間を確保しておられますか。大阪府立大学で「長期履修制度※1」という仕組みがありますが、この制度を利用していらっしゃいますか。

小暮 :今は週2日授業に出席して、週に1回、研究に関連したフィールド2箇所でアルバイトをしています。ひとつは長期間、精神科病院に入院している方が、地域で生活するために安心して退院できるお手伝いをする「地域移行支援員」をしています。それと、もうひとつは就労や留学、結婚などの理由で日本に住んでいる外国人を対象にした「識字・日本語教室」の講師をしています。研究時間の確保は、とにかく空いた時間、細切れの時間、通学の電車に乗っている時間を使っています。
長期履修制度についてですが、私には医療的ケアが必要な子どもがいるので、家族介護を理由に、本来ならば2年間の修士課程を4年間に延ばす長期履修制度を利用して大学院に通っています。特に社会福祉学専攻の院生は私のように家族介護をされている方、子育てをされている方、さまざまなフィールドでフルタイムとして働きながら大学院に通われている方が非常に多いです。そのような方は、ほとんど長期履修制度を利用されています。長期履修制度を利用しているからと言っても2年や3年間で卒業に必要な単位も取得し、修士論文も執筆出来れば履修期間を短縮することもできます。

森田 :博士後期課程は大学での授業に出席するというよりは、指導教員の先生と連絡を取りながら、自分の研究を進めていくといった感じなので、かなり自分のペースで進めています。大学の非常勤講師としての仕事もしていますが、あくまでも研究が第一だと思っているので、週2日に押さえています。学会発表などの前は昼夜逆転したりすることもあるので、ちょっとしんどいこともありますが。 長期履修制度は、28年度から利用することにしました。というのも、府大と学術協定を結んでいるフランスのオルレアン大学とのダブルディグリー※2をすることになりまして。フランスへ行き、現地の教授に指導していただくことにもなったので、もう1年必要になったからです。

田間 :「ダブルディグリー」は、二つの大学で博士の学位を取得できるという制度ですね。府大では、まだ例が少ないのですが、森田さんがチャレンジなさることは素晴らしいです。どのような経緯で、取得するつもりになられましたか。

森田 :実は去年、オルレアン大学が持っているLLLコーパス(フランス語の話し言葉の大規模データ)を使用して研究するために渡仏したんですが、その時にお世話になった先生にも、継続して指導していただきたいと思ったんです。それで、ダブルディグリーのような制度があればいいのになぁと思っていたんです。以前、フランスで日本語教師をしていたんですが、フランスの学位があれば、フランスでまた教えられる可能性が高くなりますし。そうしたら、府大の指導教員の先生からチャレンジしてみないかというお話をいただきまして。果たして自分にそのような力量があるのか、最初は不安が頭をよぎりました。でも、こんなチャンス滅多にないですし、頑張ってみることにしました。

田間 :素晴らしい出会いがあって、二つの大学の学位取得の機会を得たということですね。たくさん研究しなければならないと思いますが、ぜひ実現していただきたいです。
ラメスさんは、どのように研究時間を確保しておられますか。

ラメス :私は留学生なのでアルバイトもしてますが、奈良に住んでいるので、大学まで通う時間を利用するなど、できるだけ空いている時間を使っています。また、朝早く起きるのはすごく苦手なので、できるだけ夜遅くまで勉強しています。

小暮 :どういうアルバイトをなさってるんですか?

ラメス :高校で非常勤講師として週に2時間、ヒンディー語を教えています。その他は週に2回ぐらいホテルでアルバイトをしています。

森田 :実は私、ヒンディー語を学ぼうとしたことがあるんです。中学生の時に英語の先生にインド人の女の子を紹介してもらい、かなり長い間その子と文通していたんです。それで、インドの文化に興味を持って、大学ではヒンディー語を専攻しようと決めていました。でも、高校時代にフランス語との出逢いがありまして。そっちを専門にしてしまいました。

田間 :この座談会が、意外な出会いの場になって嬉しいです。面白い繋がり発見!ですね。
ところで、みなさん、研究時間を確保することを大切に考えておられますね。研究と生活の両立のため、とてもお忙しそうですが、研究への強い意志が、それを支えてくれているように思いました。修士課程は取得の必要な単位数が多く、特に大変です。また、博士課程ではしっかりと研究成果を出さないといけないので、特に研究時間の確保が重要ですね。
これからの研究、そして人生での抱負はなんですか。

小暮 :これからの研究がどのように転んでいくか、進んでいくか、今後、私の研究テーマを見たら、全く違った研究に見えたりするかもしれません。しかし何らかの共通点が必ずあると思います。紆余曲折しながら自分の研究をすすめていきたいと思います。人生での抱負、難しい質問ですね。でも自分の研究を通じて、声をあげられない人たち、問題なのにまだまだそれに気が付いていない人たちの代弁ができて、人々が抱える生きづらさが少しでも減ったらいいですね。誰もが生きていて楽しい、生きててよかったと思える社会を作りたいです。それに自分も、もっともっと人生を楽しみたいですし。

森田 :日本人とフランス人の間で誤解のないコミュニケーションを実現するために、研究と教育の現場をつなぎ、自分の研究成果を日本語教育、フランス語教育の現場にフィードバックしていきたいと思っています。ひいては、私が大好きな日本とフランスの友好の架け橋になれるよう、言語教育に携わりながら、研究を続けていきたいと思っています。

ラメス :自分の分野だけではなく、他分野の先生の講義にもっと積極的に参加し、自分の分野にないことや自分になかったことが発見でき、自分の考え方をより深めることです。また、実際に現場に出て自分の目で日本の教育状況や問題など、より深く勉強しようと考えています。将来、NPO法人をつくることを考えています。そのために大阪にあるNPO法人でボランティア活動を始めようと思っています。

田間 :みなさんの抱負が実現するよう、願っています。
最後に、府大の大学院に入りたい人たちに、一言、アドバイスをお願いします。

小暮 :ぜひ、入ってください!何度もチャレンジしてください。私も院の入試に失敗した経験があります。でもあきらめなくて良かった。府大の大学院で、色々な人たちと出会い、色々な研究や学問と出会い、刺激が多いです。そしてその刺激を楽しんでください。もちろん楽しいことばかりではありませんが、一緒に研究していきましょう。

森田 :府大の大学院への進学を考えている学生に今の私が言えることは、ここには期待している以上の経験、出逢い、チャンスがあるということです。大学院進学という一歩踏み出すのには、かなり勇気がいるとは思いますが、それは未来への大きな一歩になります。「これを研究したい!」という強い意志を持って入学すれば、先生方を始め、事務職員の方々も、全力で学生の研究を、そして夢を叶えるための支援をしてくださいますから。

ラメス :府大では、研究分野の壁がないです。さまざまな分野、素晴らしい先生方、年齢、国籍を超えた多くの人々に出会い、さまざまな文化、価値観、考え方を持つ人々と交流し、自分の世界をより広げることができます。

田間 :みなさん、力強いメッセージを有難うございました。
大阪府立大学は、「世界に翔く地域の信頼拠点」として、「多様、融合、国際」を基本方針に掲げています。
専攻も違い、修士課程と博士課程という課程も異なる三人の方々でしたが、図らずも、多くの共通点を知ることができました。それは、世界のなかの日本、日本のなかの世界の架け橋として、みんなが生きていて良かったと思う社会づくりをめざす。そのためのワクワクするような研究テーマは、身近な生活のなかにある、ということです。
三人の方々が素晴らしい人生を歩んでくださること、そしてみなさんからいただいた言葉を読んで、多くの方々が身近なところに研究テーマを見出し、私たちの研究科に学びに来てくださることを願っています。有難うございました。

※1 職業を有している等の事情により、標準修業年限での教育課程の履修が困難な学生を対象として、標準修業年限を超えて計画的に履修し、教育課程を修了することにより、学位を取得することができる制度
※2 連携先の大学との相互認定により、一定の期間中に両大学の学位を取得できる制度

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