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ジェンダー研究セミナー報告「移動・ホーム・ジェンダー」(共催)

2021年10月16日、日本地理学会ジェンダーと空間/場所研究グループと共催で、研究会を開催しました。報告者は神奈川大学の大野恵理氏で、「農村の結婚移民女性と「ホーム」―移住プロセスと家族―」というタイトルでお話しいただきました。

大野氏の研究発表は、新潟県上越地方の中山間地農村および移民女性の出身地であるフィリピン・ルソン島北部のバギオにおける調査をもとに、移住女性が経験する移住先社会と出身者会の2つの領域に埋め込まれたジェンダー関係を明らかにしようとしたものです。近年の移民研究とホームの地理学研究の特徴を併せ持つこの研究は、国境を越える複数の日常的行為を介したネットワークに注目するものであり、移民により「ホーム」を形成するプロセスと出身地の「ホーム」を記憶することから、女性たちの移民という経験を解き明かそうとしています。その際、定住性、不変という点で捉われがちな移民先社会である農村における移動の歴史的文脈にも着目している点は、興味深い論点です。これは、移動(モビリティ)との関係性から問うホームの地理学の特徴でもあります。

感染症拡大の中で、「ホーム」が内包していたさまざまな問題が明らかになってきました。今回、オンラインで共催することにより、多様なバックグラウンドをもつ参加者を得て「ホーム」について考えることができたのは、大きな成果となるでしょう。ご参加のみなさま、ありがとうございます。

コーディネータ:福田珠己・倉光ミナ子(研究グループ代表、お茶の水女子大学)