研究フォーカス

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05 現代文明批判-さまざまな視点からの現代文明批判

logo_focus 1つの研究対象に複数局面からアプローチする、

人文科学の分析に社会科学的方法論を使う等々―

人間社会学研究科は、学問領域の既存の境界を越えて

新しい知をつくることに意欲的な場です。

 

05 現代文明批判

さまざまな視点からの現代文明批判

人間社会学研究科の大きな特徴は学際性に富んでいるということです。3専攻に分かれてはいますが、それぞれの教員は狭い専門領域に閉じこもるつもりはまったくありません。今回、研究分野の全く異なる3専攻の教員に「現代文明批判」という共通の大きなテーマにフォーカスしてもらいました。

アメリカ文学研究とglobalization

 私の研究分野はアメリカ文学で、とくにウィリアム・フォークナーという南部作家を研究しています。The Sound and the Fury(1929)やAbsalom, Absalom!(1936)といった作品が有名です。アメリカで唯一敗戦と占領を経験した南部の文化の視点を通して、つねに戦勝国であり続けるアメリカを相対化したいというのが動機でした。
 しかしそのフォークナーの国際的な名声自体、少なくともその一部は冷戦時代のアメリカの国家的文化政策の結果であり、世界文化のAmericanization(アメリカ化)の一様相だったのです。私は大きな枠組みで自分の研究を捉えなおす必要性を痛感しました。
 そして現在Americanizationの流れに淵源をもつglobalizationが、現代世界を覆おうとしています。今アメリカ文学を研究しようとすれば、現代文明批判の視点を意識せざるをえないのです。ローカルなもの(アメリカ南部の、そして現代日本の)とグローバルなものの両方を見据えながら研究を進めています。

相田洋明 教授

SODA Hiroaki
■言語文化学専攻
最近の主要論文:
「エステルの「星条旗に関わること」、エステルとフォークナーの「エリー」―エステルの作品がフォークナーに与えた影響に関する一試論」(『フォークナー』 2013年)。
指導可能なテーマ例:
ウィリアム・フォークナー研究、アメリカ南部文学研究、グローバリゼーションの批判的ディスコース分析。



貧困

 近年、貧困の世代間連鎖に社会的関心が集まり、2013年には子どもの貧困対策法が制定されました。親の経済状況の差が、子どもの学力だけでなく、「意欲」や「希望」にまで影響を与えることが各種の研究成果によって明らかになっています。子どもがみな同じスタートラインに立てるよう、機会の平等を保障することに対して異論は少ないと思います。しかし、結果の平等についてはどうでしょうか。日本における「貧困観」自体の貧困さ、貧困の自己責任論、誤解にもとづく生活保護バッシングなど、貧困に対する社会の「まなざし」は、子どもの貧困にむけるそれに比べ温度差があると感じます。実際には、子どもの機会の平等を保障することは、親世代の結果の不平等を解決することなしには、達成不可能のはずです。
 現代社会において貧困リスクはどのように生み出されるのか。社会保障制度において最後の拠り所といわれる公的扶助制度は、どのような制度設計が考えられうるのか。現代文明批判につながる多くの研究テーマがそこにあります。

嵯峨嘉子 准教授

SAGA Yoshiko
■社会福祉学専攻
最近の主要論文:
「支援と制裁の狭間に揺れるハルツ改革―ドイツ」(福原宏幸・中村健吾編『21世紀のヨーロッパ福祉レジーム』糺の森書房 2012年)。
指導可能なテーマ例:
公的扶助制度および実施体制(日本、ドイツ)、生活困窮者に対する生活支援のあり方、貧困と社会保障制度について。


 

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