教員紹介

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授伊藤 嘉余子

研究内容

社会的養護を必要とする子どもの支援に関する研究

子ども虐待、親の精神疾患、貧困など何らかの事情によって、親と一緒に暮らせない子どもに社会が提供する養護(養育・保護)のことを社会的養護といいます。社会的養護には大きく「施設養護」と「家庭(里親や養子縁組等)養護」があります。そうしたレパートリーに関わらず、親と一緒に暮らせない子どもにとっての「最善の利益」を保障し得る社会的養護のあり方について、マクロ(法制度)、メゾ(施設の運営管理や地域での里親支援など)、ミクロ(子どもの養育/ケアのあり方)といった視点から考究しています。なかでも近年は、社会的養護経験者のアフターケアや里親支援に関する研究を中心に行っています。
調査や研究を通して、社会的養護を担う施設職員や里親の方、社会的養護の下で育った当事者の方たちと多く出会います。彼らとの関わりを通して、「家族とは何か」「親とは何か」について深く考えさせられます。親からの虐待や養育放棄によって、多くの人が「当たり前」と思っている生活を奪われた子どもたちのために、社会がすべきこと、私たち一人ひとりがすべきことについて考え、発信することを大切にしています。

tki23040[at]osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授児島 亜紀子

研究内容

社会福祉援助における哲学的課題の研究/社会福祉援助および政策における価値規範に関する研究

私は社会福祉学のなかでも、原理論や福祉哲学と呼ばれる領域を専門にしています。原理論とは「社会福祉とは何か」を問ういわばそもそも論を指しますが、私 は「社会福祉とはどのような機能を持つ政策・援助活動(実践)なのか」という機能論に関心があるのではなく、「社会福祉実践に求められる思想(人間観や社 会認識)とはどのようなものであるべきか」という規範的な問題に関心があります。近時、災害研究を始めとしたさまざまな領域でヴァルネラビリティ (vulnerability)という言葉が使われています。これはもともと傷つきやすさや攻撃されやすさといった意味を持つ言葉ですが、この概念が社会 福祉の政策枠組に用いられている英国では、弱く、傷つきやすいと見なされた人びとはリスク管理の対象となり、その結果彼ら・彼女らの自己決定が妨げられ、専門職による過度な保護や干渉が行われていると指摘されています。一方わが国でも、「生活保護バッシング」に見られるような、困難のもとにある人を攻撃す る言説が広がっています。行きすぎた保護もあからさまな攻撃も、排除の様態のひとつにほかなりません。このような時代だからこそ、 vulnerabilityをはじめとする基礎概念の吟味や社会福祉の人間観の探求を行う原理論(および福祉哲学)を、より深く掘り下げていく必要がある と考えています。

kojima[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授隅田 好美

研究内容

「病いとともにその人らしく生きるための支援」に関する研究

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は自分の意志で身体を動かすことができなくなる難病です。自分でできなくなることが増えると、今までのアイデンティティが崩壊します。また、病状が進行すると呼吸が困難になり、人工呼吸器の装着の有無について自己決定が必要となります。このようなALSの人の身体的、心理的、社会的ニーズの変化に伴うアイデンティティの崩壊・再構築のプロセスについて研究し、主観的ニーズに寄り添った支援について研究しています。その中で「患者・家族・専門職の認識のズレ」について整理しました。
 また、歯科衛生士と社会福祉士の2つの資格を有していることから、2つの知識を融合した研究を行っています。口腔がんや顎変形症など歯科領域の疾患がある人の心理・社会的ニーズと支援について研究しています。口腔がんは手術後、口腔機能障害(食べること・話すこと)や顔面の変形などが残存し、離職や社会関係が減少するなど社会生活に大きく影響する人もいます。そのため、医療ソーシャルワーカーとして口腔がんの人の心理的支援や生活支援について研究しています。

メッセージ

いろいろな経験をしてください。自分が本当にやりたいことに出会うまで…。自分が一生追求し続けたいと思う研究テーマに出会えた人は幸せだと、府立大学の大学院で教わりました。

sumida[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授田垣 正晋

研究内容

身体障害者の心理社会的な問題、市町村障害者施策における住民参加型会議のあり方、調査方法論

私は、障害者の生涯発達やライフコースにおける心理社会的な課題と、市町村の障害者施策における当事者参加型住民会議をそれぞれ研究しています。また、ライフストーリー、ナラティブ、アクションリサーチといった質的調査の理論的検討をしています。さらに、障害者差別解消法の市町村における展開を質的研究によって検討しようとしています。最近では、量的研究にも関心を持っており、質的研究との混合の手法を考えています。

tagaki[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授山野 則子

研究内容

子ども家庭福祉の体制づくり研究:スクールソーシャルワーク研究/児童虐待防止ネットワークの研究/子どもの貧困/親支援プログラム

ソーシャルワークって何でしょう。相談、支援する、という概念が浮かびますが、では臨床心理や教育など他領域とどう違うのでしょう。社会の認識はそのくらい低いというのが現実です。そこには、社会福祉研究の課題があります。ソーシャルワーク実践を理論化する、実証的研究を積み重ね、社会に還元する、勘ではなく実証的研究に基づいた援助を当たり前にする、必要があるのではないでしょうか。社会福祉は実践の科学です。社会福祉研究には実践を動かしていくような研究が必要です。人々が生きやすい世の中を作る、今ある制度を機能させていくことに社会福祉研究が貢献しなければなりません。そんなミッションを持って、国の調査受託、自治体の受託を受け、特に子ども領域、スクールソーシャルワークの確立から子どもの最善の利益を実現する体制づくりに取り組んでいます。

メッセージ

楽しくわくわくと社会を動かしていく、社会に関わっていくことをともに考えてみませんか。

yamano[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 教授吉武 信二

研究内容

効果的な健康維持増進、ダイエット、トレーニングの方法及び支援に関する研究

誰もが豊かな気持ちで幸福に過ごせる社会を実現するためには、従来の社会福祉研究に加え、医療、保健、教育など幅広い学問を積極的に応用する必要があるといわれています。なかでも、人々の健康を増進するための施策や指導は、非常に重要な要素のはずですが、その具体的な支援方法についてはまだまだ発展途上であるのが現状です。
私の研究テーマは、この人々の健康支援に関することを中心に、健康福祉・健康教育・身体教育・スポーツ科学など、幅広い研究領域に関連した内容になっています。元々は、自分自身が陸上競技のアスリートであり、学生時代からスポーツ科学領域を中心に、競技力を向上させるための効果的なトレーニング方法や指導方法などを研究してきました。そこで、研究は実践につながってこそおもしろいものとなることを強く実感し、現在もそれが私のベースになっていて、私たちの日常生活に潜んでいる身近な健康問題について、個々の事情に合った具体的な改善策を検討しています。この身近でありながら、未だ確立しきれていない人々の健康支援の具体的方法について、これから大学院に進学される方々と一緒に追究していきたいと考えています。

shin[at]las.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授木曽 陽子

研究内容

障害のある子どもを含めた保育、障害のある子どもの保護者支援、保育者支援

主に「障害のある子どもやその家族がいきいきと日々を過ごせるようにするために、保育者や支援者がどのような保育・支援を行うべきか」を研究しています。障害のある子どもは様々な特性から現在の社会の中で生きにくさを感じることがあり、障害のある子どもと共に過ごす家族も悩むことが多いです。同時に、それらの子どもや家族を支える保育者や支援者の悩みも尽きません。このような“みんながしんどい”状態を解決したいという思いから、障害のある子どもの育ちを支えるための方法をいろいろな角度から考えています。また障害のある子どものみならず、広く乳幼児期の子どもとその家族や保育者への支援についても検討しています。研究が机上の空論に終わらないように、現場の実践から理論を導き出すこと、そして導き出された理論を現場に還元することを意識的に行っていきたいと思っています。

メッセージ

私もまだまだ修行中…みなさんと一緒に様々な角度から考えていきたいと思います。

kiso[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授嵯峨 嘉子

研究内容

貧困および公的扶助に関する研究/ホームレス施策をめぐる日独比較

貧困問題に対して、とりわけ公的扶助制度を中心とする貧困対策がどのように機能しているのか、制度・政策を中心に研究しています。家賃滞納などに現れる生活困窮のサインを早期に把握し、所得保障制度につなげる仕組みをどのように構築できるのか、また、さまざまな生活課題を抱える困窮者に対し、就労支援などの支援サービスと所得保障を組み合わせながら、最低生活をどのように保障するのか、に研究関心があります。比較対象として、ドイツの公的扶助制度および住宅喪失予防の取り組みを取り上げながら検討しています。

saga[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授東根 ちよ

研究内容

地域を基点とする包括的な支援体制、ボランタリー活動をめぐる自治体政策

政策科学の視点から、人が望む地域で暮らしていくための包括的な支援体制について研究しています。少子高齢化が急速に進展し、家族のありようや人々のライフスタイルが変化するなか、地域を基点に社会福祉を捉え直していくことが、いっそう求められるようになっています。私自身はこれまで、特に、子どもや家庭を取り巻く問題に、地域福祉がどのようにアプローチできるのかに強い関心を抱いてきました。政策と事例、その両方を行き来しながら研究に取り組んでいます。

メッセージ

みなさんのなかにある「問い」を、深めていくお手伝いができればと思っています。

higashine[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授松田 博幸

研究内容

セルフヘルプ・グループの実態および援助専門職者との関係に関する研究

社会福祉方法論(ソーシャルワーク論)においては、専門職者としてのソーシャルワーカーがどのように援助を展開していけばよいのかという関心が研究の中心となっていますが、セルフヘルプ・グループ(自助グループ。以下、SHG)のような、障害などを体験している本人、いわゆる当事者が主導している活動は社会福祉方法論においてどのように位置づけられうるのでしょうか。そのような関心に基づいて研究をおこなっています。
SHGがどのような活動をおこなっているのかということのみならず、その活動が専門職者にとってどのような意味をもつのかに関心をもっています。SHGを、ソーシャルワーカーがその実践を展開する際の資源の一つとして考えることは可能ですが、それを、ソーシャルワーカーの基本的なありようを問い直すものとして位置づけることはできないでしょうか。そのように考えると、SHGの文化(たとえば、自らの個人的な体験をわかちあう)が専門職者のありよう、ひいては、研究者のありようを根本から問い直す可能性が見えてきます。たとえば、研究者が自らの個人的な体験を記述すること(オートエスノグラフィー)もその延長線上にあると考えられます。

matsuda[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授三田 優子

研究内容

当事者主体の精神障害・知的障害者支援に関する研究

精神・知的障害者数は増加しています。が、外見からはわかりにくいこともあり、他人事ととらえる人が多いのが現状です。一方で、特別な障害をもっているのだから支援を受ける側としての役割のみを強いられたり、自分の人生設計に自らが主体となってモノを言う自由を奪われている場合も少なくありません。国連の障害者権利条約でも「私たちに関することは私たちを抜きに決めないで」がスローガンとして掲げられたのも、そのような背景があります。
さまざまな生きづらさを抱えた人が暮らす社会で、実は障害者側が支援を提供する場面も増えています。一方的な支援関係というのも存在しないでしょうし、支援を提供する人も受ける側にもなる社会です。そんな中で障害者支援も当事者主体を貫きながら、障害者自身も誰かを支えることができる「成熟した社会」になるのではないか、と考えながら研究をしています。

mita[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授吉田 直哉

研究内容

戦後日本の保育カリキュラム理論史・実践史、保育者のライフヒストリー、保育士養成カリキュラムの開発・改善

教育人間学の手法を用いながら、子どもの発達、保育カリキュラムの構想について思索を深めています。教育人間学は、哲学、心理学、社会学、教育学など、さまざまな学問領域の成果を踏まえながら、人間の形成過程と変容を、社会環境との関わりの中で捉えようとする学問領域です。現在は、特に、戦後日本の保育カリキュラムの理論史と実践史の関連について、強い興味を持っています。

メッセージ

大学院の時に読んだ本、聞いた話は、自分の専門分野に直接関わりのないものこそ、その後の数十年の思考パターンに強い影響を与えます。

yoshida[at]sw.osakafu-u.ac.jp

人間社会学専攻

社会福祉学分野 准教授吉原 雅昭

研究内容

認知症ケア政策および実践の国際比較(日本、スウェーデン)2011年度以降は認知症ケアの実践と政策を、社会科学で実証研究しています。日本とスウェーデンの研究者が共同で。

現在の関心は、認知症とともに生きる人が「自由時間」をどう過ごすか。彼らが望みつつ「満たされていないこと」は何か等です。 認知症は「治す」アプローチよりも、認知症とともに生きる本人の人生と生活を支える方が大事だと考えます。認知症研究は従来から医学アプローチに偏っていました。近年増加している医学以外の研究も「介助の困難、たいへんさ」の研究に偏っており、調査対象はほぼ99%、家族か援助職です。これでは、本人にとってよい成果は生まれにくいと考えます。日本では「日本認知症本人ワーキンググループ」が2014年以降、素晴らしい活動を展開しています。国際的に見ても評価できる、優れた認知症支援の実践も全国各地にあります。同時に、我が国では認知症高齢者の精神科病院への入院が増加傾向にあり、劣悪な支援を高コストで受け、死ぬまで長期入院する傾向も強まっています。これは非常に深刻な人権問題、かつスキャンダルであるだけでなく、国際的に見て特異な悪例です。最大の問題は、援助職の失敗により投薬中心の支援や精神科病院入院が起きていることです。
以上のような問題意識ですので、Person Centered Careや「センター方式」等にも関心があります。認知症ケア研究より前は、自治体福祉システム全体の国内比較や国際比較、および歴史研究をしていました。自治体の計画づくり、業務の執行管理、予算と決算等です。現在も、いくつかの市町村や社協で、計画づくり、計画の実施と進行管理等のお手伝いをしています。

yoshihara[at]sw.osakafu-u.ac.jp