実践者と学生の合同セミナー開催報告

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2010.12.11 性分化疾患/インターセックス ―医療・教育・福祉の谷間を埋めて未来につなぐ

日時:12月11(土)13:00~16:00
場所:ヴィアーレ大阪・4F「ヴィアーレホール」
講師:
ミルトン・ダイアモンド博士(ハワイ大学医学部教授・性科学者)
島田憲次博士(大阪府立母子保健総合医療センター・泌尿器科医師)

企画・司会
東優子(大阪府立大学人間社会学部准教授)

性分化疾患/インターセックスとは、性器や性腺(卵巣・精巣)、性染色体の特徴が男女に典型的なそれとは異なったり、性器・性腺・性染色体が不一致である など、70種類以上あるといわれる状態の総称である。その発現率は、外性器の特徴から性別を判断するのが困難な事例で新生児1/2000、何らかの男女に 非典型的特徴をもつ人の割合については1/200とも推計されている。

1990年代に入って、「かつての患者」が治療方針や医療マネージメントに対して異議を申し立てたことが、海外メディアによって大きく報じられたことも あって、関連学会が治療方針の見直しを検討し、国内でも、日本小児内分泌学会が性別を判定するためのガイドライン策定に向けた初の実態調査を実施するな ど、事態には少しずつだが変化がみられる。しかし、専門職者の間でも、とくに医療以外の、子育て支援に関わる教育・福祉分野では、いまだ「知る人ぞ知る」 問題として埋没したままとなっているのが、このインターセックス/性分化疾患である。

90年代に顕在化した当事者運動が告発した問題の本質は、「男女どちらの性別に判定すべきか」ではなく、当事者に付与されたスティグマであり、孤立するな かで苦悩を抱え込まざるをえなかった状況にこそあった。そこで本シンポジウムは、この問題に詳しい専門家を講師に迎え、基礎知識の確認と論点整理をおこな い、医療に限らず、教育や福祉の視点から、包括的ケアのありようについて考え、未来へとつなげてゆくことを目的として開催された。

講演1 性分化疾患(島田憲次医師)
■性分化とは
■性分化疾患とは
■診断・治療の現状
■私たちの取り組みについて、講演

講演2 インターセクシュアリティ(ミルトン・ダイアモンド博士)
■性の発達理論
■マネーの双子
■さまざまな事例紹介
■当事者運動の台頭
■治療方針への新提言

当日の会場には、全国から医療関係者や研究者あるいは学生など110名が参集した。休憩時間には、ダイアモンド博士が登場するPrime Time Live Boy or Girl? – When Doctors Choose”(米国ABC放送1997年)の一部が上映され、当事者運動が台頭した当時の、古くて新しい問題に直面した米国社会の反応を垣間見ることが できた。また、後半の質疑応答に先立ち、島田憲次医師が制作された性分化疾患の診断と初期対応に関するDVDが上映され、会場の高い関心を集めた(報告者 より)。