研究情報

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ケアラー研究

子育ての行き詰まり感が高まったり、軽減したりするプロセス
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〈物理的ゆとりの欠乏〉
家事、育児への実際の手助けをしてくれる人がいない(実働提供者の欠如)状況にあり、仕事がある場合には、家庭と仕事の責任の重複が合わさり、仕事がない場合には、母親はなかなか子どもから離れられず、母子分離サポートの欠如が起こります。仕事の有無に関わらず、時間的体力的限界となり、〈物理的ゆとりの欠如〉が生じていました。
〈受け入れがたい子どもの行為〉
子どもと過ごす中で、思い通りにならない子どもの行為やどうしたらよいかわかならい子どもの行為にたびたび出会います。これら子どもの行為は 母親の希望から外れており、〈受け入 れがたい子どもの行為〉といえました。
〈精神的つながりの欠如〉
何気ない会話や子どもの相談などを する相手がおらず、このような語り相手の欠如によって孤独感が生じ、さらに、子どもに対する意向が夫や祖父母 と異なる身内とのミスマッチや、家族のために時間を費やし自身の時間が持てない個人としての自分のなさにぶつかっていました。これら3つの状況が関連しながら、〈精神的つながりの欠如〉が生じていました。
〈子どものためのとらわれ感〉
理想とする自分や子どもの姿と子どもに対する責任感、さらに、周囲から感じる評価の目が絡み合い、それらにこだわる〈子どものためのとらわれ感〉を持ってしまいがちです。
〈バランスの崩壊〉
日常生活では、ご飯を苦労して子どもに食べさせたり、子どもとの寝る時間を守ろうとするなど、母親は試行錯誤のかかわりをくり返していました。しかし、いっこう に減らない世話がつみ重なりとなって、コントロールできない感情による行動に陥ります。はっと気づいた親としての罪悪感によって、気持ちをとり直して、試行錯誤のかかわりを再びくり返します。このような一連の状況を〈バランスの崩壊〉としました。
〈気持ちのたてなおし〉
〈バランスの崩壊〉から抜け出せない状況から、例えば、一時保育を利用しはじめ、子どもと物理的に離れ、子どもを視界からはずす機会ができたり、自身のことを否定せずに認めてもらえる保護者の友達ができて、自分へのありのままの承認を受けるようになるといったきっかけ、また、育児サ ークルへの参加や2人目の出産などによって、自分の子どもひとりだけでなく、他の子どもや親を見るなど、周りが視界に入る経験をするなど何らかのきっかけによって、3つが全てそろい、何とかほどほどの子育てをつかむようになっていました。こうして、〈気持ちのたてなおし〉が行われていました。