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第25期女性学講演会レポート

10月23日、第25期女性学講演会「計量分析から読み解くジェンダーと家族」をオンラインで開催いたしました。100人近い方にご参加いただき、まことにありがとうございました。報告者は、大阪府立大学の乾順子さん、立命館大学の筒井淳也さん、東北大学の田中重人さんでした。以下、講演会の内容についてのレポートです。

 

この講演会は、日本家族社会学会の全国家族調査委員会による全国家族調査(NFRJ)データを用いて、高齢者のケアについての意識、成人子と親の関係、離婚後の経済状況などを計量的に明らかにするとともに、1999-2019年のデータから見えてくる日本の家族についての規範や実情、課題を概観することを目的として行われました。

第1報告は、乾の「同居・扶養・介護の意識はどう変わってきたのか」でした。コーホートによる意識の差が顕著だが、新たな規範の萌芽が見られ、女性内の学歴や就業形態によって、意識の差異が生じていることが明らかにされました。施設介護についての意識の分析からは、女性の実子(実の娘)が介護責任者との意識が根強く、男女間、世代間、女性内部での意識の差異を含み込みつつも、全体としては家族に依拠すること脱却する方向に移行しているのではないか、ということが指摘されました。報告では触れられなかった年齢の効果について議論がなされました。

 

第2報告は、筒井淳也さんの「ジェンダーの視点からみる「おとな親子関係」とその変化」でした。おとな親子関係を変化させる要因を、人口学的要因の変化、経済的要因の変化、ジェンダー関係の変化(「夫方/妻方」の偏りの変化)に整理し、続いて、1999年と2019年データで居住・近居・遠居の変化と「話らしい話」の頻度の変化について分析された結果提示されました。居住については、夫方への偏りがあるが均等化していること、「話らしい話」は、個別化しているが、実母/義母問わず、女性への偏りが強いことが指摘されました。

最後に、ジェンダーの視点には、「格差をあぶり出すための視点」と「「違い」から社会を説明する視点」の2つがあり、それぞれのゴールは異なるが、それ自体は優劣に結びつきにくい「違い」が、さまざまな不公平をもたらすことに留意が必要である点について議論されました。

 

第3報告は、田中重人さんの「結婚・離婚と性別格差」でした。経済的分配と家族の関連には、生活保持義務があるが、その履行を強制する実効的な規範が弱いことが指摘されました。等価所得(税込みの世帯年間収入の額)を同居人数の平方根で割ったもの)を指標とすると、6種類の婚姻経歴によって差があり、特に離別・死別経験のあり無配偶の場合に大きな性別格差があり、女性のほうが20-40%程度低いことが示され、離婚経験者の等価所得に効果のある変数として、学歴・有配偶・常時雇用を継続・子どもと同居があげられました。

母子世帯の貧困がなぜ解決しないのか、結婚や離婚が不平等を生み出すことがよくないことだとは思っていないのではないか、という問いについて議論が行われました。

(コーディネーター・乾順子)